ヴァニラ・ティー

2000-11-01 朝

今朝も雨。

・・・・庭のシラカバもミズナラも

すっかりと色付いたというのに

雨はおやみなくシトシトと降り続けている。

・・・・・・・

この静かな林の中に独りで住んでいると

そんな普段の生活がとても楽しく思えるのに・・・・

こんな雨の日は、その独り住まいが

妙に淋しくなるから不思議だ・・・・

    

   
・・・・でも・・・・こんな淋しさも・・・・

よく味わってみると、とても素敵だ!!

煙るように降る雨の中、

ベランダの手摺りの上のヒマワリの種には

今日も小鳥たちが次から次へと・・・・

やって来て呉れるもの。

   

    
いつもやって来るコガラに、ヒガラに、シジュウカラは

今日も素焼きの容れ物の縁に止まると

家の中でペンを走らせている僕をガラス戸越しに覗き込み

頭を二、三回、可愛らしく傾げると

ヒマワリの種一粒を口にくわえて

白樺の小枝まで飛んで行き

枝の上で、皮をむいて、種の中身を美味しそうに食べている。

   

   
(あいつら寒くないのかな?)

暖かい部屋の中にいる僕は、フトそんなことを考えてしまう。

   

   
部屋の中では、今日も石油ストーブが低い唸り声を上げ

クロード・チアリのギターが静かに流れている。

・・・・僕はこの詩を書きながら・・・・

時々、手を休めて、大きなマグカップに手を伸ばして

美味しいお茶を暖かく味わう。

   

    
このヴァニラ・ティーは

十日ほど前に、三重県から

二人連れでヒュッテに遊びに来たマサヨちゃんが

お友達のヒトミちゃんに

「それ、置いてっちゃいな・・・・(八岳さんが)好きみたい・・!」

と言われると、コックリと頷(うなず)いて

「八岳さん、これ飲んでね・・・・!!」と明るく言って

美しい素敵な紫色の缶ごと、ヒュッテに置いて行ったティーである。

   

    
この素敵なヴァニラ・ティーを飲みながら

・・・・突然、天使のようにヒュッテに泊りに来て呉れた

指の先まで伸び伸びと育った

この二人の若い女性の事を、僕は思い出した。

   

    
静かな紅葉の松原湖の周りを散歩したり

夜遅くまで薪ストーブを囲んで

三人で語り明かした時の二人の素直さを・・・・!

それから、明け方近く・・・・

冷え冷えと冴え渡った夜空に一杯の星屑を

ガラス戸越しに見上げていた二人の美しい横顔を!!

   

   
・・・・・・・

ペンを止めて、ガラス戸の外を眺めると

霧のような雨は、今も静かに降り続いている。

   

   
・・・・僕は、もう一度、ティーをカップに注いだ・・・・

   

   
さっと、あたりに漂う甘い香り。

チアリのCDからは「シェルブールの雨傘」が流れ出した。

・・・・そして・・・・

ふと、この曲を何回も何回も聴いた

ずっと、ずっと昔の事を僕は思いだした。

   

   
そう、あの頃の僕は、丁度、この二人の年ごろだったと思う・・・!

・・・・・・・

・・・・・・・

甘く哀しい事が、余りにも多かったあの頃・・・・!!
・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・でも・・・・今から考えると

あの頃の人生って、何んて美しかったんだろう・・・・!!

   

    

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