小海町の蝶  第9集
    

 小海町の蝶(81)   アゲハ





文・写真/小池 一成

 監修/ 八岳晴耕 

「アゲハチョウ」とか「ナミアゲハ」とも呼ばれることがあります。
蝶の中ではモンシロチョウと同じくらいポピュラーな種類だと思います。
だから「並アゲハ」なんて呼ばれるようになったのでしょうか。
 長野市や上田市などでは、普通に見られるこのナミアゲハですが
、実は小海町では、なかなかお目にかかれない珍しい蝶です。
似ている蝶にキアゲハ(参照「小海町の蝶」?.30)がいます。
こちらの方は、よく見かけることができ、庭、野原、畑などで見かけることができます。
この2種類の見分け方は、慣れると簡単で、単純に、翅の色の黄色が濃い方がキアゲハ、
黄色が薄い方がナミアゲハですが、
もっとしっかり見分けるポイントは、前翅表面の内側にある模様です。
キアゲハは大きな三角形の網掛け模様になっているのに対して、
ナミアゲハは、数本の筋になっています。
なぜ、小海町にはキアゲハは多くいるのに、
ナミアゲハは少ないのか、その理由はよくわかりません。
でもキアゲハの幼虫は、シシウド、ニンジン、パセリなどセリ科の植物を食べるのに対して、
ナミアゲハの幼虫の方(ポケモンのキャタピーにそっくり)は、
ミカン、カラタチなど暖かい地域に生えるミカン科の植物を食べます。
この辺が、生息数の多い少ないに関係しているのかも知れません。
  

     

小海町の蝶(82)   ゼフ竿物語
         

文・写真/小池 一成

      

 私は現在73歳。私が蝶の採集を始めたのは
30歳の時の事ですので、
もう人生の半分以上を、蝶と付き合っている事になります。 
その間、私が一ばん大切にしてきた採集用具は何かと言うと、
写真にあるような長さ6mのゼフ竿です。

 普通、庭先などに飛来するアゲハチョウやシロチョウ類は
長さ 1.5mほどの竿のついた、普通の捕虫網で十分ですが、
この「小海の蝶」シリーズNo.76に掲載されたメタリック・グリーンに輝くゼフィルス族の蝶となると、
2階の屋根ほどの高さの枝の先にとまったり、
高い栗の木の花などで吸蜜する事が多い為、
いきおいこの様なゼフ竿
(ゼフィルス類の蝶を採集する、長い竿の捕虫網)が必要になってくるのです。
しかも、このゼフ竿は重さ1.3kgほどもあり、
蝶を叩き出す時は、常時、首をウンと後ろに曲げ真上を見上げている為、
1時間も使っていると、もう本当に疲れてしまうという
体力と気力を必要とするシロモノなのです。    

現在、このゼフィルス類の虜(とりこ)になりつつあるのが、
過去2年程、この小海の蝶シリーズの執筆をなさっている、小池一成さんですが、
この期間中、監修を担当して来た八岳晴耕は、今回の執筆を機に、
今後のこのコラムの執筆を全面的に同氏にお願いする事に致しましたので、
宜しくお願い致します。長い間、有り難うございました。       

        
 

     

小海町の蝶(83)  ヒメウラナミジャノメ

      
文・写真/小池 一成
         


      

  ヒメウラナミジャノメを漢字で書くと姫裏波蛇の目蝶となると思います。
その名前のとおり、少し小さく、翅の裏面に波状の模様がついているジャノメチョウです。
ジャノメチョウ科の蝶については、
八岳耕晴師匠が「小海町の蝶?33オオヒカゲ」で書かれていますが、
翅の表面が黒褐色系の色をしていて、裏面には、蛇の目紋があるのが特徴です。
ヒメウラナミジャノメは、写真を見ていただくとわかりますが、
表面にも蛇の目紋があり、この数などで他の種類と見分けることができます。
小海町では、春から秋までの間、庭先、道路脇の草むらなど、
どこでも普通に見られます。地味で、生息数が多いことから、
私はこの蝶の写真撮影や採集をあまりしてきませんでした。
これは、「蝶屋」(蝶の愛好家)に一般的な傾向としてあるようで、
八岳耕晴師匠もこれまで、「小海町の蝶」でこの蝶を紹介してこなかったのは、
たぶん同じ理由で採集をしなかったからだろうと思います。
さらに、幼虫はイネ科の植物を広く食していて、
探すポイントが絞れずに幼虫の観察例が少ないという話しを聞きました。
庭先のヒメジョオンの周りをリズミカルに舞う頼りなさそうな小さい蝶をみかけたら、
それが本種です。目立たないですが、身近にいる蝶の代表です。
            

     

小海町の蝶(84)   ヒメキマダラセセリ

文・写真/小池 一成


         

  今年の夏は最悪でした。
天候が悪く判断ミスが続き山野へ採集に出掛けても
雨に降られて逃げ帰って来たことが何度もありました。
そのうちに採集に出掛けるのも面倒になり、気がつけば蝶の季節も終わりに近づいています。
小海町や南牧村の標高が高い場所は、
平地に比べると蝶の発生が半月から一月ほど遅れるため、
年によっては、ゼフィルス(ミドリシジミ類)の発生と梅雨明けがタイミングよく重なり、
森林のあちらこちらでナワバリを争って
クルクルとまわりながら追いかけっこする「エメラルド色の花吹雪」が多く見られるのですが、
残念ながら、今年はこれもあまり見ることができませんでした。
まさに、「ゼフ不調」です。
それでも、雲の切れ間から陽の光が差し込むのを祈りながら車をノロノロと走らせていると
道脇のウツギやノリウツギの白い花に昆虫が集まっているのに出会うことができました。
ハナカミキリムシの仲間とハナアブの仲間が多く、
これらをマクロレンズで撮影すると仮面ライダーに似ている感じで結構カッコイイものです。
写真のヒメキマダラセセリもせわしなく飛び回りながら盛んにこの花の蜜を吸っていました。
本種は生息数が多く、小海町では6月下旬〜9月上旬頃に草地や里山などで、
ごく普通に見ることができます。

              

    

小海町の蝶(85)   メスグロヒョウモン
     


          

文・写真/小池 一成
          

野鳥にはキジやオシドリなど雌雄で色や形が違う種類がいますが、
その多くは、メスよりオスの方が派手で「きれいな色」をしています。
その理由は、より目立つことで、メスに気に入ってもらい、
繁殖を有利に行なうためでないかと一般には言われています。
冬鳥として渡ってくるカモ類のオスも繁殖期には、きれいな色をしていますが、
非繁殖期にはメスと同じ地味な色に変わる種類が多くいます。
人間の世界とは、ちょっと逆さまなような気がしますね。
 蝶にも野鳥と同様に、雌雄で色の違う種類がいます。
写真の「メスグロヒョウモン」は左側がオスで右側がメスです。
この二つが本当に同じ種類なのか半信半疑でいましたが、
野外で交尾しているのを見て、やっと納得することができました。
ヒョウモンチョウの仲間は豹柄の翅を持っているのが普通ですが、
なぜかこのメスグロヒョウモンのメスだけが、豹柄ではなく黒色なのです。
 もともと豹柄の元祖であるヒョウやチーターなどの動物は、
獲物を捕獲しやすいように保護色として身にまとっているのですが、
盛夏に道路脇の花で吸密しているヒョウモンチョウには、保護色になっているとは思えず、
なぜ翅の色に豹柄を選択したのか、とても不思議です。
この蝶はメスよりオスの方が豹柄好き、これも人間の世界と逆ですね。
    

 

小海町の蝶(86)  ムモンアカシジミ(2)

文・写真/小池 一成

明けましておめでとうございます。本年が皆さんにとって、
小海町にとって良い年になりますように。そして、蝶がいっぱい見られる年になりますように。
「小海町の蝶」が八岳晴耕こと宮昭雄氏によって公民館報への掲載が始まったのは、
1998年、長野オリンピックの年ですから、今年で13年目、私が引継いで3年目になります。
そもそも宮さんと私が出会うきっかけとなったのは、
この「小海町の蝶」であり、ムモンアカシジミという蝶が縁となりました。
蝶の採集を始め、どこで蝶を探したらよいのか見当がつかずにいた頃に目にしたのが公民館報でした。
生まれつき内気な性格の私は、その時すぐに、宮さんに連絡をとる勇気はありませんでしたが、
公民館報のバックナンバーを見ているうちに、
「ムモンアカシジミ」を紹介している号にぶち当たったのです。
夕焼けと同じ色をしているその蝶は、アリに育ててもらうという特異な生態を持っており、
極めて生息域が限られていて、その木にしかいないという珍蝶なのです。
それがこの町にいるのか!?これは、ぜひ宮さんに会って、情報をお聴きし、できれば見てみたい。
あわよくば1頭採集したいと思い、メールを送ったのでした。
このような下心を抱いて、私は宮さんへ弟子入りしたのです。
(写真は、アカシジミ。ムモンアカシジミの近縁種)

     

小海町の蝶(87)   ムモンアカシジ (3)

文・写真/小池 一成