小海町の蝶  第3集

     

小海町の蝶(21)  ツバメシジミ

   
文   八岳晴耕
写真  小郷 毅

   


       

  ツバメシジミは北海道から九州まで、平地に広く分布している蝶です。言うならばごくありふれた蝶だと言う事になると思います。
 そのせいかも分かりませんが、小海町のこの蝶の標本は、この写真の雌蝶がたったの一匹・・・しかありません。(10) きっと、ズボラな筆者がいつでも捕れる蝶だと思って、手を抜いていたのかもしれません。何んともはやお恥ずかしい話しです。
 ところで、ツバメシジミの雌は、写真で見るように暗褐色をしていますが、雄は紫藍色をしています。
  春から秋にかけて、この蝶が明るい草地をチラチラと飛び、ハギやシロツメクサなど色々な花で吸蜜している姿はとても可愛らしいものです。(25) 東京あたりでは、春から秋にかけて、五回ほど発生を繰り返しているようですが、小海町あたりでは東京に比べると遥かに気温が低く夏期もずっと短いため、発生回数は二回ほど少なくなると思われます。
 話は変りますが、この蝶が幅広い分布域を持っているのは、幼虫がクズ、ハギシロツメクサなど色々なマメ科の植物を食べる事に起因しているようです。
 この標本の採集日は一九七七年八月四日、採集場所は松原湖畔となっています。
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 昨一九九八年七月十七日の夕方、ヤナショーホームに木ネジを買いに行った時の事である。
 入口を入ったトタン、店内にオオムラサキが飛んでいるのを見付けた筆者は、大声でこう怒鳴った。
 「虫取り網、貸して!」
 ・・・筆者の大声に驚いた女性の誰かが、気を効かせて貸して呉れた売物の捕虫網を掴むと、筆者はオオムラサキの後を追い掛けた。
 しかし、そのオオムラサキは壁にコツンとぶつかると、商品棚の後に落ちて見えなくなり、筆者は地団駄踏んで口惜しがった。

 それから四日後、またヤナショーホームに買物に行くと、高志店長が
 「さなえが、この間の蝶捕かまえときましたよ!」
 と言って、渡して下さったのが、採集日がキチンと分かっている写真のオオムラサキ第一号である・・・さなえちゃん、有り難う!

 オオムラサキはその名前の通り、大型で紫色をした日本の国蝶にも指定されている美しい蝶である。
 写真の様に紫色をしているのは雄だけで、チョコレート色をした雌は雄よりもふた回りほど大きい。

 植樹はエノキ。越冬態は幼虫で、エノキの落葉の裏に隠れているので有名。 筆者も落葉をめくっては幼虫探しをしたものです。

(2001-01-01 小海町公民館報 第 371 号に掲載)  

小海町の蝶(22)  ルリタテハ

文   八岳晴耕
写真 小郷 毅

     

  

      

 ルリタテハは、姿も飛びh方も、軽快な蝶です。
 まず、その姿ですが、ご覧のように黒地の前後翅の亜外縁に青色の帯、前翅前縁に白い星がチカリと輝いてるのが、何んとも粋(いき)な装いです。
 次ぎに、その飛び方ですが、雄が縄張りを張り、その中を旋回している時などは、数回翅をバタバタと上下に動かしたあと、一〜二秒の間、翅を止めてスーッと空中を滑空することがあり、とても軽快です。
 この蝶が、真夏の熱い日向で、地面やちょっとした石の上などで、翅を休めているのを、よく見掛けますが、この蝶を捕まえるのはなかなか難しいようです。
 と言いますのは、捕虫網を持って、後ろからソーッと気が付かれないように近づいても、ちょっと不自然な動きをすると、敏感にその動きを察知して、パッと逃げてしまうからです。
 ・・・・こんな具合ですから、この蝶は、捕まえにくい蝶の一つだと言う事ができると思います。 分布は日本全土。食草はサルトリイバラ、ホトトギスなど。信州では、夏と秋に、二回の羽化。越冬態は成虫です。
 最後になりましたが、写真の蝶のデータは、一九八一年八月五日、松原湖付近にて採集となっています。

   
(2001-03-01 小海町公民館報 第 372 号に掲載) 

    

小海町の蝶(23)  ヒメギフチョウ

文  八岳晴耕
写真 小郷 毅

     
 
         

 今回は、この町の、とっておきの蝶の一つを皆さんに紹介することに致しましょう。・・・・皆さんの中に上の写真に写っているような蝶をご覧になった方がいますか?(7) いたとしたら、その方は大変にラッキーな方です。 と、言いますのは、このヒメギフチョウは、ゴールデンウィーク前後に、約三〜四週間の間だけ、ごく限られた場所にだけ姿を現す美しい蝶だからです。(15) ところで、この蝶の出現期が近づいて来ると、毎年のように、私の家に、溝の原の篠原昭次さんから電話が入って来ます。内容は、この「春の女神」というニックネームがついているヒメギフチョウに就いての電話です。(24) そして、年によっては、二人でヒメギフチョウの生息地に出掛け、地面をはいずり回って、卵や幼虫の姿を見付けて大騒ぎをすることもあります。・・・自然の事を知るのは、とても楽しい事だからです。(32) ところで、話は変わりますが、皆さんの中に、私達と一緒に、蝶の事を学んでみたいと思われる方はいませんか?(37)
 もし、いらしたら九三〜二六七五の宮宛てに電話を下さるようお願い致します。
 出来れば、一緒に勉強をして参りたいと思います。
(42) 最後になりましたが、ヒメギフチョウは開張約五五ミリと形は小さいですが、アゲハチョウの仲間です。
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(2001-04-10 小海町公民館報 第 373 号に掲載) 

    

   

小海町の蝶(24)  ヒメシジミ

文   八岳晴耕
写真 小郷 毅

     
 

          

 ヒメシジミは、6月初旬から、9月なかば位い迄の間、小海町のアチコチで、お目に掛かる蝶です。筆者が写真の蝶を捕まえたのは一九九一年六月一六日。
(6) 場所は、稲子の集落から稲子湯に向かって少し上ったところにある、ひらけた草原だったと思います。
 食草は、アザミ、ヨモギイタドリなどキク科やタデ科など多種類の植物。分布は九州(一部)、本州、北海道となっています。(15) ところで、筆者が蝶の採集を始めたのは三十才の時の事でした。その当時まで筆者が知っていた蝶の種類は、わずかに六〜七種。
 筆者は、これが日本に棲んでいる蝶の全てだと思い込んでいました。(23) ところがです。以前、筆者が勤めていた会社に、五才ほど年下の蝶気狂いがいたのです。しかも、その彼が昼休みのコーヒーを飲みながら、われわれ仲間に向かって、よく蝶の美しさの話をしたのです。(31) 筆者以外の仲間は、「そうね」とか「そうだよね」とか、適当に相槌を打っていたのですが、わずか数種類の蝶しか知らなかった筆者だけは別で、(大のおとなが、わずか数種類の蝶を集めて、何をそんなに喜んでいるんだ!)とばかりに「バカかお前は!」とか「
ウスラトンカチめ!」とかその彼を目茶苦茶にけなしていたのです。お恥ずかしい話ですが、これが蝶に出会う前の筆者の姿でした。
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(2001-06-01 小海町公民館報 第 374 号に掲載) 

    

小海町の蝶(25) オナガシジミ
    

文   八岳晴耕
写真 宮 興子

    

 年一回、七月下旬から八月上旬にかけて最盛期を迎える蝶のひとつにオナガシジミがあります。ご覧の通り翅表は褐色を帯びた黒色という地味な色合いをしていますが、裏面は淡いベージュ色の地に、薄墨色の斑紋という独特の紋様をしています。(10)  食樹は、小海町でごく普通に見受けられるオニグルミですが、食樹の数に比べると、個体数は圧倒的に少なく、この蝶を見付けるのは、意外に難しいようです。(16) 写真の蝶は、一九八一年八月六日の夕方、大月川沿いのクルミ林の林縁を活発に飛んでいた個体を採集したものです。(21) さて、話は前回の余談に続きますが・・・・小生の後輩のくだんの蝶キチガイ氏は、或る日の事、筆者にこんなことを言いました。
 「八岳さんの好きなビールを、好きなだけ飲ましてあげるから、僕の家に蝶を見に来ませんか・・」って。
 勿論、筆者はビールに釣られて、彼の家に蝶を見に出掛けました。(33) ところがどうでしょう?
 彼の家の居間に飾られていた、何百種という色とりどりの蝶を見たトタン、筆者はその美しさに圧倒されビールもそこそこに我が家に飛んで帰り、次の週末には、捕虫網を買って、東京では有名な高尾山に蝶の採集に出掛けたのです。この出来事が筆者の蝶人生のスタートになったのです。
 人生って面白いですね!  (45)

(2001-07-15 小海町公民館報 第 375 号に掲載)

    


小海町の蝶(26) オオムラサキの当たり年

文    八岳晴耕
写真  小郷  毅 

   

    

 上の写真をご覧下さい。 ご覧のように、今年の夏は、色々な町民の方々、、小池ともさん(西馬流)、
中島きよえさん(芦平)、
井出雄一さん(東馬流)、畠山久紀さん(松原)、新井公男さん(大畑)、池端寛さん(七尾)からオオム
ラサキの標本が寄せられました。これは本当に嬉しい事です。
と言いますのは、筆者が住んでいる美術館の近くではオオムラサキの姿を目にすることは、余り無いからです。ですから、正直な話三年ほど前、溝ノ原の篠原昭次さんから、一頭目の標本(採集月日の詳細が不明)を譲り受ける迄、町のコレクションの中には小海町のオオムラサキの標本は無かったのです。
ところが、どうでしょう?
 今年は、こんな風に一挙に6頭もの標本が増えてしまったのです。本当に今年はオオムラサキの当たり年だと言えそうです。(30) ところで、こんな風に町民の皆様から標本が寄せられるのは、大変にうれしいのですが、一つだけ困った事があるのです。
 (35) それは、捕まえた蝶の処理がマチマチのため、中には標本がひどく傷んでしまっている事があるからです。(39) こんな事が無いように、次号では蝶を捕まえた時、どうしたらよいかを書く事にしたいと思います。
 そして、この町独自の、素晴らしいコレクションを作って参りたいと思います。
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(2001-09-01 小海町公民館報 第 376 号に掲載)
       

       

   
小海町の蝶(27) 「蝶を捕まえたら」

     
文    八岳晴耕
写真  小郷  毅

       

  
         
 

 今回は、前回にもお話した通り、蝶を捕まえた時、どのように処理したら良いかをお話しましょう。
 よい標本といいますのは羽や体が、なるべく傷(いた)んでなくて、データ(採集年月日、採集場所、採集者)がハッキリ分かっているものを言います。
 そのために、蝶を捕まえた時に、その蝶を標本にしようと思ったら、チョット可哀想な気もしますが、傷つかないうちに、なるべく早く殺してしまいます。 殺し方は、写真のように羽の付け根の硬い部分(この部分を胸部”きょうぶ”といいます)を人差し指と親指で、ギュッと押さえると、すぐに飛べなくなってしまいます。補注網で、蝶を捕まえた時などは、網の中で蝶を片隅に追い詰め、網の上から、胸部を押して殺してしまうと、網の中から簡単に蝶を取り出す事ができます。
 あとは、形をそのままにして、適当な大きさの紙封筒の中などに入れ、採集年月日、採集場所、採集者をその封筒に書いて、筆者にお渡し頂ければ、標本にして、町のコレクションに追加致します。
 自分で標本を作って見たい方は、毎年、夏が来ると採集教室が開かれますので総合センター(92−4391)に申し込んで、ご参加下さい。
 蝶、トンボ、魚、キノコ、山菜など、自然の事を知るのは本当に楽しいものです。  

   (2001-10-15 小海町公民館報 第 377 号に掲載)

     

     

小海町の蝶(28) クジャクチョウ

     
文    八岳晴耕
写真  小郷  毅
    


     

     
 クジャクチョウの和名は、ご覧のように、この蝶の羽には、クジャクの目玉模様のような紋様がついているために、クジャクチョウと呼ばれるようになったのだと思います。
 筆者の生まれ故郷の東京のど真ん中で、この蝶に出会うのは、殆ど不可能に近い事ですが、標高の高いこの小海町で、この蝶にお目に掛かるのは、そんなに大変なことではありません。
 皆様のご自宅の庭や、ご近所の道端にアザミなどがございましたら、少し注意してみれば、6月末あたりから10月末くらいまでの間、よくアザミの花で、この蝶が吸蜜しているのが観察できると思います。
 ところで、この蝶がアザミの花などに止まっている時などの羽の色は、往々にして、真っ黒く見えます。
 と言いますのは、蝶の羽の表と裏とでは、紋様とか色合いが違うのが一般的でクジャクチョウの場合は、裏側は、細かい濃淡はあるものの、ほぼ全面が真っ黒だからです。
 クジャクチョウが出現するのは、年2回。6月末頃から1化が発生し、8月後半あたりからは、2化が発生しているようです。 食草はエゾイラクサ、カラハナソウ、ホップなどを食しているようです。
 私達の小海町には、こんなに素敵な数々の蝶が棲んでいるのです。この美しい自然を、いつ迄も大切にして行きたいものですね!
 

      
(2001-12-10 小海町公民館報 第 378 号に掲載)

   

   
小海町の蝶(29)  蝶の大きさと羽の色合   

文   八岳晴耕
写真 小郷  毅

    
 

 皆さん、明けましてオメデトウございます。
 今回は、いま迄と少し趣向を変えて、蝶の大きさと羽の紋様のお話を致しましょう。
 それでは、まず、今回の写真をご覧下さい。
 左上のブルーと黒の羽の色をした蝶が、世界で一番大きな蝶と言われているアレキサンドラトリバネアゲハの雄で、その下のチョコレート色とオード色の蝶がその雌です。 それとは反対側の、右側上下の2頭は、ビクトリアトリバネアゲハの雄雌(両種ともオーストラリア地域産)です。
 さて、この4頭の蝶に囲まれた真ん中に、小さな紫色の蝶がいますが、これ夏季、皆様のお宅の庭などでチラチラと飛んでいる、公民館報366号で紹介しました、あの可愛らしい小海町産のルリシジミです。
 こんな風に、棲んでいる国や地域が異なると、蝶の大きさや色合いも、こんなに違ってしまうのです。
 又、雄と雌の色合いも、写真のように別種かと思われる程に、違っている場合もありますし、公民館報368号で紹介しましたキベリタテハなどの場合は、もう形や色で区別するのが、とても難しく、標本が固くならないうちに、交尾器を押し出して調べないと分からないものもあるのです。
 今年からは、少しづつ、こう言った話題にも、触れて参りたいと思います。
 

   
      (2002-01-01 小海町公民館報 第 379 号に掲載)

    
    
 小海町の蝶(30) キアゲハ

   
文   八岳晴耕
写真  小郷 毅

   
 

   
 写真の小海町産のキアゲハをご覧下さい。
 キアゲハは、名前の示す通り、黄色っぽいアゲハチョウで、南は屋久島から北は北海道までと、非常に分布範囲の広い蝶です。
 その為か、大勢の人達にたいへん親しまれている蝶です。
 たぶん皆様の殆どの方が、この蝶を何度か、ご覧になった事があるのではないかと思います。
 ただ、この蝶には、この蝶と大変よく似たアゲハチョウという別種の蝶がおりますので、注意が必要です。そのアゲハチョウについては、別の機会にお話をする事に致しましょう。
 さて、このキアゲハですが、小海町では、筆者が住んでいる美術館の近くよりも標高の低い町の中の方がずっと数が多いようです。
 ところで、このキアゲハで面白いのは、山頂の広場を旋回するのが好きらしく、筆者は東京近郊の高尾山頂や小海町の高見石付近、札幌市郊外の小高い山の山頂付近等でこの蝶が旋廻飛翔をしているのを、何回か目撃した事があります。
 発生回数は、地域によっても異なりますが、四月から十月位までの間に、二回から四回ほど繰り返しているようです。
 この蝶の幼虫は緑・橙・黄・黒の鮮やかな紋様をもっているため、皆様の畠のパセリやニンジンの葉の上で、丸々と太った幼虫を見
つけられた方もいらっしゃるのではにかと思います。


   

(2002-03-10 小海町公民館報 第 380 号に掲載)