井出勝彦さん:油絵画家、墨絵画家、デザイナー

  

井出さん・・・・ひと呼んで「勝っちゃん」・・・・は不思議な人物である。

1997 年、小海町の町興し(まちおこし)を考える会の「小海塾」で、筆者は初めてこの人に会ったのであるが、何を隠そう・・・・その時の勝っちゃんの第一印象はハローインのカボチャのランタンだったのである。
・・・・そう・・・・カボチャを刳り貫き(くりぬき)、丸い目・三角形の鼻・半円形の口をつけた例のカボチャのチョーチンである。
今から考えると、その時、勝っちゃんがどうしてカボチャのランタンに見えたのかよく分からないが、兎に角、そう見えたのだから仕方がない。

2 回目に会った時のイメージは、横丁のラーメン屋台のウサン臭い髭(ひげ)親父である。
・・・・それは、もう何年も前の事になるが・・・・東京中野の自宅からそう遠くない横丁の小路に、ヒゲの勝っちゃんによく似た怪しい雰囲気の親父が、ラクダの腹巻き・チヂミのステテコ・首から紐でつるしたお守りを身に付けて、夜な夜なラーメン屋台を出していたからである。

3 回目に会った時の印象は、キューバのドヤ街(キューバにドヤ街があるかどうか、筆者は知らない!!)で靴磨きをしているヒゲのカストロ(キューバのドヤ街にカストロと謂う靴磨きがいるかどうかも、筆者は知らない・・・・)であった。
・・・・その時の印象はどうして起きたか?
これはもう・・・・筆者の研ぎ澄まされたインスピレーションによるとしか言い様がないのである。

・・・・上に述べた三つの印象がどう転んだにせよ、ことほど左様に、この人に対する筆者の印象にはお上品なものは一つも無い!!

「それなら、お前はどうなんだ・・・・?」
と逆襲されると、もう筆者などは、象に踏んづけられたガマガエルのようにピシャンコになるだけの話であるが、筆者が勝っちゃんに出会った当初の印象というものは、とにもかくにも、そんなものだったのである。

・・・・ところがである。
その後、暫くしてからの事であるが・・・・
普段、余り他人(ひと)に対して腹を立てた事のない筆者が、この勝っちゃんに内心腹を立てた事が 2 〜 3 回あった事があるのである。

それは、例の小海塾の例会の席上、それまで未解決だった幾つかの議題に対し、皆で長い間、アアデモナイ・コウデモナイと検討を重ね、
「それじゃあ、こうしようか?」
などと話をし、いざ、実行に移そうかと言う段階になると、いつもこのヒゲの男が、
「それより、もっと面白い物がありますよ!」とか
「全く関係ないけど、こんな事を考えてみたら、面白いんじゃないんすか?」
等と言い始めて、折角まとまりかけた話を、いつも壊しに掛かったからである。
・・・・そんな時、筆者はこう言って、いつも内心憤慨したものである。
「ボケナスメエ・・・・こいつは一体何を考えているんだろう????」

こんな事があったせいだろうか?
・・・・それまで筆者が、いま皆様がご覧になっていらっしゃるこのサイトのホームページに書き続けて来た「トヴァルジャンカを持つノーム」を小海町のマスコットにしたら・・・・と言う提案が埼玉県の小林章先生から小海塾に提出された時など、筆者はこのヒゲ大臣が
「そんな事より、もっと面白いものがありますよ・・・・!!!」
と真っ先に言うのではないかと思っていたのであるが、意外や意外、このヒゲ大臣が
「いやあ、八岳さんのホームページ・・・・全部に目を通したんですけど、とても面白かったですよ。 八岳さんのホームページにあるトヴァルジャンカをもっているノームだったら、この町のマスコットにしてもイイんじゃないんすか・・・・!!」とか
「・・・・ノームについては、サンリオという会社から、大型の 2 冊の本が出てますが、何か表情が恐ろしくて小海の町の人には馴染めませんよ・・・・」とか
「もし、八岳さんがヨロシケレバ、俺なりのイメージをデッサンしてみたいんすけど・・・!!」
などと、言いだしたのである。

この彼の言葉には、筆者はオッタマゲーションの三乗・・・・でした!!
選りによって、このヒゲ達磨がこんな事を言うなんて!!
筆者は、本気になって、自分の頬を右手の親指と人差指でギューッと抓って(つねって)みたり、ゲンコツをかためて自分の頭をコツコツと叩いてみたり・・・・!!!!
・・・・言うなれば
「いま、目にしているものが信じられなくて・・・・!!」
夢ではないことを、色々なことをして確かめてみた次第である。

でも、このカボチャランタンは至極マジメに、このホームページのトヴァルジャンカ・コーナーに目を通し、驚く勿れ、わずか数週間後に自分自身を筆者以上のトヴァルジャンカの信奉者にしてしまったのである。

全く、人の世は摩訶不思議なものである!!!!!!!!!!!

・・・・・・・
・・・・・・・
さて、こうした出来事を通して、この井出勝彦という男を改めて見直してみると、筆者はそれまでとは全く違った側面を、この人物の中に見出したのである。

まず、第一に、この男が感性豊かな非常に優しい人間だという事に気が付いたのである。

なるほど、色黒・ヒゲ・少しガサツな話し方などから判断すると、チョット見には勝っちゃんはガサツなタイプに思われがちだが、内面的にはとても優しい男なのである。
・・・・筆者は、この心優しきカボチャ・ランタンと話をする度に、彼の感性が、地位・名誉・金銭・伝統などと言うような人間の心の垢に全く汚(けが)されていないのを感じさせられ、この小海という片田舎に居ながら、何故、彼が都会っ子にも見られないような洗練されたセンスを持ち得たのか??・・・・と、いつも不思議に思わざるを得ないのである。
しかも、面白い事に、彼自身は自分が優しい男だとは全く信じていないのである。

・・・・この事実に筆者が気が付いたのは、1999 年のゴールデンウイークの「小海町アーティスト展」の飾り付けの日の事であった。
その日、二人連れで展示会場にやって来た井出夫妻は、飾り付け用具の搬入・飾り付けなどに精を出していたが、途中で一休みしたときに、たまたまその場に居合わせた筆者が、勝っちゃん一家の写真を撮ったのである。
そして、その翌日、その時撮ったスナップ写真を筆者は始めて見ることになったのであるが、その写真を目にした瞬間、筆者は思わず
「オーーーーーーッ!!」
と、オドロキの声を上げた次第である。

筆者がそこに見たもの・・・・・・それはカボチャ・ランタンでも、胡散臭い(うさんくさい)横丁のヒゲのラーメン親父でも、キューバのドヤ街の靴磨きでもなく、筆者が、そこに見たもの・・・・それは、ごくありふれた心優しきパパの姿だったのである。

僕は、このヒゲのカボチャ・ランタンが大好きである。

なぜか?
・・・・それは、どう自問してみても、当の僕にも分からず仕舞である。

と、言うのは、彼の豊かな感性を除くと、彼には何ひとつ図抜けた所が無いからである。
ホント・・・・彼はそんなにハンサムでもない。
頭が素晴らしくイイ訳でもない。
地位がある訳でもない。
ましてや、お金となると、とうてい金持ちとは言える人物ではない。

・・・・でも、この男と話をしていると、性格的に・・・・この男は決して人にオベンチャラを言って、甘い(うまい)汁を吸う・・・・という事の出来ない男である・・・・という誠実さをひしひしと感じさせられるからである。  (1999-08-04)

  
勝っちゃんの作品の紹介

Ptylitza(プティリッツァ)

勝っちゃんの作品の最高傑作は、何んと言ってもプティリッツァのグラフィックスである。・・・・このプティリッツァについては、また、別の機会に、詳しく紹介をしたいと思っていますが、何れにせよ、筆者自身は、このプティリッツァ達が、小海町の自然の中に住んでいると思っているのです。

油彩

勝っちゃんの油彩は、柔らかくて暖かみがある。
ここに紹介する 3 点の作品は、クリスマスの時期に合わせて描かれた彼一流の可愛らしい油彩であるが・・・・・・雪に包まれたクリスマスの時期、こんな可愛らしい油絵が壁に掛かった素敵な部屋で、薪ストーブを焚きながら、ウィスキーをチビリ・チビリと舐めたら、どんなに幸せだろうか・・・・と、ついつい、思ってしまうのであります・・・・!!

  

 

墨絵

勝っちゃんの作品は、墨絵も面白い。
次に紹介する作品は特に筆者の気に入っている墨絵であるが、実の所、筆者には勝っちゃんが何をここに画こうとしたのか、テンデ分かっていないのである。
・・・・鍵のようにも見えるし、デンデン太鼓のように見えなくもない・・・・!
・・・・首を横にして、縦軸を水平にして見たら分かるかも知れないと、首を90度寝かせてみたが駄目である。
それならば、上下さかさまにしたらどうだろうか・・・・と、思って、パソコンの前で逆立ちをして、5分ほど眺めてみたが、矢張りダメである。

・・・・・・・
ところで
・・・・・・・
筆者には、ヒトツ悪い癖がある。
それは、他人に分かって、自分に分からない事がると、ひどく口惜しい思いをすることである。
・・・・この絵の前に立った時もそうであった。
「この絵を描いた勝っちゃんに分かって、なぜ俺に分からないんだ????」
こんな、思いに駆られて、この絵を眺めると、ホントの話、ますます何が何んだか分からなくなってしまうのである!
余りに口惜しいから、パソコンを蹴っ飛ばしてやろうかと思ったが、約 50 万円という値段を考えたトタン、足がビビッて動かなくなってしまう始末。

三日ほど、ああでもない・こうでもない・・・・と考えた揚げ句、
「そうか、何を画こうとしたかは・・・勝っちゃんにも分からないんだ!!」
と、考えた時になって、筆者はヤットのことで自己嫌悪の渦巻きから抜け出ることができたのである。
・・・・まったく「ウヒヒヒヒ・・・・・!!」である。

では、その後、勝っちゃんに、
「この絵って、何を描いたの?」って、聞いたことがあるだろうか???

Oh, no !
Never, never, never ! ! ! !
・・・・である。
だって、勝っちゃんに
「モチ、分かってるよ!!!」
て言われたら、またまた、ショックになっちゃうもの〜〜〜〜〜!!